箪笥に貼られた文言は… |
抽き出しの中の貼り紙の、何か怪しげな文言の正体が分かりました。
幸運にも、農学博士で日本経済史にお詳しい、
中京大学の阿部英樹教授にお聞きすることができました。
以下は阿部先生からの文章そのままです。
「一枚目は、箪笥を販売した店のレッテルです。
現在は「大阪」ですが、江戸時代までは「大坂」と書かれていました。
明治政府の方針で「大阪」と改められました。
明治時代には「大阪」と「大坂」は、まだ混じって使われていたようです。
店の屋号が播磨屋というのも、時代を感じますし、明治の古い箪笥かも知れません。
書かれている文字は次の通りです。
大坂北久太郎町どぶ池南ニ入
たんす 長持 嫁入道具
播磨屋事 松村太兵衛
もう一つは泥棒よけのための、お手製のお守り札みたいなものです。
新古今和歌集の和歌と、おまじないの呪文?が書かれています。
和歌は「不偸盗戒」(ふちゅうとうかい)と題する僧侶の歌で、
盗むなかれと戒めたものです.次の通りです.
「浮草の一葉(は)なり共(とも) いそがくれ 心なかけそ おきつ白浪」
問題は、続きの呪文めいた文で、正確には何ともいえません。
読みは、たぶん「ばそんばしんてい しや神いてんでん」でしょう。
盗むと「しや神」すなわち「邪神」が出るぞといったところでしょうか。」
以上
抽き出しすべてに貼られていたお手製の「お守り札」。
明治のその昔、嫁入り箪笥に納められた着物を、
何より大切に思う気持ちが伝わりますね。
阿部英樹教授は、現在中京大学経済学部の教授で、10年ほど前、父が地元の郷土史編纂室に関わっていたときお世話になって以来、おつきあいさせて頂いています。