父に会いに行った日 |
最近、“帰宅願望”のようすが見られるので、
一度面会に来てもらえないかと連絡をもらっていた。
私の顔を見て、帰りたい気持ちが強くなりはしないかと心配したけど、
その心配も無用だった。
部屋に行くと、ちょうど自分のベッドを探しているところだった。
声をかけ、名前を告げて、誰か判る?と尋ねると…、
『ひょっこり言われても、詳しいことは覚えとらんけえ〜』ときた。
でも、母や叔母の名前を耳元でささやくと、
眼を細めて、幼い頃の呼び名を口に出したりした。
相変わらず、口から出るのは『一眼二足』のことわざ、
『浦島太郎』の歌など、リピートボタンを押したように繰り返すばかり…。
元気な身体で美味しく食事ができることなど、
今の生活でのプラスの話題を並べながら、
母の調子がもう少し良くなったら帰ろうねと、
父に負けずに、繰り返し話しかけた。
心配は取り越し苦労だった。
よく来てくれた、よく話を聞かせてくれたと納得して、
片手を上げて私を見送ってくれた、聞き分けのいい父だった。
気になって、出口で振り返ると、既によそを向いている…;;。
もう気持ちは、そこにはないようすだった。
淋しいけれど、こうしてすんなり帰ることができるのも、
そんな父だからなのかもしれない。
手みやげと一緒に、母に頼まれて、手作りのベアを持って行った。
胸に名札を縫い付けたベアを手渡すと、ほころんだ顔で、
可愛い可愛いと繰り替えし、ベッドの枕元に座らせた。
これで自分のベッドが判るね。
戻る場所を探さなくていいね。
一時間ほどのおしゃべりで気が済むのなら、また時間を作って会いに来よう。
こんな暑さの日中に、家で過ごすことの方が危険かもしれないし…。
今月中にまた来よう。
車を30分ほど走らせれば、会えるところにいるのだからね。
大丈夫、それくらいはできるから。
テディベアは、以前、趣味で母が作ったものです。
父が喜んでいたことを話すと、母も嬉しそうでした。
ベアを父に持って行くことも、母の思いつき…。
それは私にとっても嬉しいことでした。
『一日遅れの“父の日”』
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