2014年 04月 21日
やわらかな父の手 |
久しぶりの父の手は、温かくやわらかかった。
いつもご訪問ありがとうございます。
やわらかくて白い。
昔はもっと日に焼けて、ゴツゴツしていた。
爪の隙間に土や油染みのあった指先も、違う人のようにきれいになった。
施設から父が熱を出したと連絡を受け、一緒に出向いたクリニックで、
点滴を受ける間、父が動かないように手を握っていた。
ときどき天井を指差すようなしぐさで、
聞き取れない言葉を口にする父。
それでも、看護婦さんが耳元で名前を呼ぶと『はい』と返事をする。
点滴をする事も、その意味も理解にはおよばないけど、
名前を呼ばれて話しかけられると、何かが甦るのか、
ならない会話が不思議と成り立つときもある。
自分の名前だけは、忘れていないのだろう。
父のようすを気にしながら目をやるクリニックの中庭には、
赤紫のライラックのつぼみの房が、少し重たげにうつむいていた。
間もなく華やかな、それでいて清楚なピンク色の花を咲かせるのだろう。
四月も中旬を過ぎて、春はただ中…。
でも、まだ寒いような…。
父を乗せた施設の車を見送り、薄曇りの空を見上げながらクリニックをあとにした。
二日が過ぎて、父の熱は下がった。
食欲も出て、笑顔も戻った。
きょう念のために、もう一度点滴を受けに行った。
クリニックの処置室から見えるライラックの花。
ようやく開いた薄いピンク色の小花が、つぼみの赤紫へときれいなグラデーションになって風に揺れていた。
少し動こうとする父の、やわらかい手を握りなおした。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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by ryonasa
| 2014-04-21 19:55